願い

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  「いっ!?」 その瞬間、上から黒い鬣を靡かせた獅子の魔物が落ちてきて、アタシの体を一飲みにしようと噛み付いた。 背中と腹から牙が食い込む。 ねっとりと顔に魔物の涎が付き、荒々しい息が吹きかかる。 アタシはわなわなと震えていた。 「…こ、こんの畜生風情が…調子に乗るんじゃねぇぞぉお!!『濁流澎湃』!」 『グオォオオォオ!!』 魔物を膨大な量の水流が襲い、近くの川へと流し込む。 アタシは魔物の口から出て、水面の上に立っていた。 服が血で青く染まってしまった。 「やっだぁ、酷いわぁ。これどうしま…っ!?」 突然水中から巨大な蛇が飛び出してきて、アタシに襲い掛かる。 アタシは慌てて避け、水中に飛び込んだ。 早く泳げるよう、尾と水掻きを出す。 「まさか水中でアタシに敵うと思ってんの?」 水が急に流れを変え、大蛇を巻き込むかのように渦を巻く。 大蛇は流されまいと必死に耐えていたが、とうとう渦に飲み込まれてしまった。 アタシはその渦を操り、大蛇を壁にたたき付ける。 大蛇は気を失った。 その隙に水面に上がる。 「ぷはっ。何なのよぉー。今日は厄日なのぉ?」 『グオォオオォオ』  「…」 地面が揺れ、水面に波紋が広がる。 アタシは歩み寄ってくるそれを見て、思わず顔が引き攣った。 黒く巨大な、ドラゴンだ。 ドラゴンは口から黒い炎をちらつかせていた。 「…ほんっと、厄日!!」 『グオォオオォオ!!』 ドラゴンはその黒い炎をアタシに向かって吐き出した。 アタシは慌てて水面に潜る。 しかしその黒い炎は水を蒸発させ、川の温度を急激に上昇させた。 あ、熱ーい!!
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