旅立ち

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  僕はゆっくりと目を覚ました。 朝日がカーテンの隙間から注がれている。 鳥の囀りに、僕は寝ぼけた頭が覚醒していくのがわかった。 また、あの夢だ。 いつもいつも同じことをあの七人は話し続けている。 しかし、何故僕はそんな夢を見るのだろうか。 そんなことをぼんやりと考えていると、不意にノックのする音が響いた。 「おはよう、サテラ」 「おはよう、セツ。また朝から特訓してたの?」 僕はセツの腰に下げられた黒い刀に目をやりながら問う。 僕とセツは生まれてすぐ捨てられた孤児だ。 しかしセツは刀、僕はペンダントと一緒に捨てられていたらしい。 だから僕達は、いつもそれを身に付けて生活していた。 セツはさも大事そうにその黒い刀に触れる。 「ああ。最近特に…眠れないからな」 「…また、他の人に何かされた?」 僕は心配そうに彼を見つめる。 セツは、僕以外の他人を拒絶する。 だから周りにはセツを良く思っていない人が沢山いた。 しかし、理由はそれよりも、恐らく…セツに種族の特徴が見当たらないからなんだと思う。 黒く長い髪、丸い爪、丸い耳。 牙もなく、翼も尾も、角もない。 そして何より…魔法が使えない。 七神のどれかに恩恵を受けていれば、必ず使えるはずの魔法が。 そのせいで、弱く幼い時にはよく暴力も振るわれたものだ。 最近は小さな嫌がらせになっただけかと思っていたのだけれど…。 するとセツは、フッと笑った。 「…心配性だな。ただ夢見が悪いだけだ。気にするな」 「…夢?もしかして、七人の人が喋ってる夢?」 「…俺はお前に話したこと、あったか?」 セツが目を見開く。
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