旅立ち

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  僕も驚いていた。 「ううん。僕も最近、その夢ばかり見るから…」 「サテラも?」 「うん。でもよかった。変な夢だから不安だったけど、セツも一緒なら怖くないや」 ふふ、と笑えば、セツも笑う。 僕にしか見せない、子供っぽい表情。 もっと他の人にも見せれば、きっと皆もセツのことを嫌いになったりしないのに。 そこが凄く勿体ない気がしてならなかった。 「皆ー、ご飯よー!早く起きてらっしゃーい!」 「…サテラ、お前は飯食ってこいよ。俺はいつもの場所にいる」 「あ、うん」 孤児院のおばさんの声がし、セツは不機嫌そうに窓から屋根の上に登っていった。 僕は着替えを済ませる。 薄茶色の短い髪、黄緑の瞳、尖った爪。 僕は風の神の種族である、妖精であった。 臆病な性格であり、肉体的に貧弱であるが、魔法に長け、傷を癒す鱗粉を撒く透明な羽があるのが特徴だ。 ちなみに羽は出し入れ可能。 僕は、確かに臆病だ。 だから誰にでも優しくする。 怖いから、嫌われたくないから。 それ故に、真逆の考えを持つセツに憧れる。 セツのように強くなりたい。 それが、僕の夢だった。 それを言えば、セツはいつも笑った。 『俺が強いのは、お前のお陰だ』 そんなセツの言葉を、僕は未だに理解出来ていない。 何故僕のお陰なのだろうか。 僕は何もしていないのに。 ただ、 『…お前に出会えて、本当によかった』 その意味だけは、ちゃんと理解していた。
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