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「サテラ、西の森で薬草を摘んできてくれないかい?」
「はい、わかりました」
「お願いね」
朝食を済ませると、おばさんが籠を僕に手渡した。
薬草摘みは当番制になっていて、久しぶりに今日、僕の当番が回ってきたようだ。
僕は籠を持ち、外に出る。
すると屋根からセツが降りてきた。
「…薬草摘みか」
「うん。ちょっと行ってくるよ」
「俺も行く」
「駄目。セツは今日薪割りの当番だったでしょ?」
「…終わったらすぐ行く。気をつけろよ」
「心配性はどっちなんだか」
僕がクスクスと笑っても、何故かセツは怖い顔をしていた。
僕は不安になり、セツを見つめる。
「…セツ?」
「…いいか、絶対に気をつけろよ。何か危険が迫ってきたら、すぐに逃げるんだぞ。わかったな」
「…わ、わかったよ」
セツはすぐさま薪割りをしに、院の裏へと歩いていった。
僕も西の森を目指して歩いていく。
今日は何だかセツがおかしい。
西の森なんてすぐそこなのに、何故そんなにも心配しているのだろうか。
獣道を歩きながら、物思いに耽る。
魔物が出ても、僕には魔法があるから大丈夫なのに。
そんなに僕って、頼りないのかな…。
ショックだなあ…。
とぼとぼと歩いているうちに、薬草が生い茂る丘にたどり着く。
そこに座り込み、籠の中に薬草を摘んでいった。
不意に感じる、視線。
体が強張った。
な、に?
「…おい、坊ちゃん」
「!」
草花を踏み締める音が三つ。
どれも大きな男性のものだ。
僕はゆっくりとそちらを向いた。
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