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アタシは慌てて川上へ泳ぎ、水面へ飛び出す。
そして水でドラゴンを包み込んだ。
これで息を止め…あらら。
しかしドラゴンはその水を全て吸い込み、逆にこちらに向けて放つ。
水なので簡単に弾いたけれど、その隙にドラゴンはこちらへ突進してきた。
「おっと!」
素早く横に跳んで回避し、水を急速に回転させ、ドリルのようにドラゴンに向けて無数に放った。
「『流抉蛇渦』」
ドラゴンはその黒く大きな翼を広げて宙に逃げたが、蛇のように渦はうねり、逃さない。
渦はドラゴンの尾と脇腹の肉をえぐり、止めを刺そうと心臓を狙った。
しかし、突然ドラゴンの前に黒い空間が現れ、そこに渦は全て飲み込まれてしまった。
アタシは唖然とする。
な、何?
ドラゴンは傷付き、飛び続けることが出来なくなって地面に倒れた。
「やだー!ベティ、死んじゃやだー!」
「あ、アルジエ?」
アルジエがドラゴンの元へ駆け寄る。
ぽろぽろと涙を流し、ドラゴンに抱き着いている。
アタシはそれを見て事の真相に漸く気付いた。
疲れがどっと押し寄せてきて、アタシは大きく溜め息をつく。
「…アルジエ。さっきからアタシを襲ってきた魔物は、あんたの差し金だったわけねぇ?」
「…な、何よ。なんか文句あんの?あたしはこの国の次期王女よ!あんたなんかがとやかく言えるような身分の女じゃないんだからね!」
アルジエは強く目元を擦り、涙を拭う。
アタシは懐から煙管を取り出し、魔法で火をつけて長い間自粛していた煙を吸い込んだ。
紫色の煙を吐き出す。
煙はアルジエの周りを漂っていた。
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