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「あのー…ちょっと離れてもらっていい?逃げたりしないから…」
「うん!わかった!」
ようやく体が自由になった。女の子の顔を見つめる。
茶色掛った肩くらいで切り揃えられた髪、爛々と輝く大きな瞳―。
だが記憶の中に一致するものはない。
顔をみても誰かが思い出せないのだ。
昔の知り合いだろうか?
思い出そうと努力はしてみたものの何も出てこなかった。
「申し訳ないんだけど…誰だかわからないや…人違いじゃない?」
「…そっかー」
すごく悲しそうな顔をする女の子がうつむいて黙ってしまった。
「…あー」
空気に耐え切れなくなり、意味もなくうめく。
「えーと…名前は?名前聞けば思いだすかも!」
「さくらだよー…」
さくら…残念ながら記憶の中の知り合いにはない名前だ。
ただ初めて会ったハズなのに不思議と懐かしい感じがした。
本当に知り合いなのかもしれない…
「んーダメだ…やっぱり思い出せない。ごめんね」
「そう…コータは薄情なやつだなぁ…」
「あ~…さくら…さんは覚えてるんだよね?なんかもっとさ…ヒントとかないかな?」
泣きそうな顔を見せられ焦る。
必死にいろいろ考えるが何も浮かばない。
「さくらで…いーよー…。」
うつむいたままのさくらが地面を指でつついている。いじけているのか?
「ん~…じゃあさくら、一緒に行った場所とか行ってみるのはどうかな?」
「!」
勢いよく顔が上がる。
「えっと…ダメかな?もしかして忙しかったりした?」
「全然忙しくない!もちろんいいよ!お散歩しよう!」
両手を突き上げるさくら。すっごい笑顔でこちらを見ている。
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