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本当に知らない人なのだろうか?
こんなに屈託のない笑顔を向けられるような関係であったのなら
少なくとも話した事くらいはあるはずだ。
本当に人違いなのだろうか?
さくらが会った事があると言ってるのが本当であったなら
…自分は何故忘れてしまったのだろう…。
「コータ?どうしたの?…おこってる?」
飛んだ帽子を拾って頭にかぶりながら、さくらがまた泣きそうな顔で聞いてくる。
「いや…怒ってないよ。ただちょっと…」
「ちょっと?」
「…なんでもない。」
「あー!やっぱ怒ってるだ!だってアレ…」
「アレ?」
さくらが指さす先にはアスファルトに落ちて蟻の餌食となっているアイス。
「ああ…オレのアイスが…って、今はそんなんで怒る気もないよ。」
「そっかぁ…コータも大人になったんだね…昔だったら泣いてたかもしれないのに。」
「大げさだなぁ…」
深くうんうんと頷くさくら。変なところで感心されている。
この口ぶりからすると本当に自分の事を知ってる人のように思えた。
「よし!それじゃあどこか行こうか。行くところは任せるよ、さくら。」
「うん!」
元気のよい返事。
自分の手を掴むと意気揚々と歩き始める―。
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