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響く悲鳴――
「う、うわあぁぁ!!」
恐怖に支配された騎士の一人が叫びながら剣を抜いた。それに続いて次々に剣を抜く騎士達。
自身に迫る死に落ち着ける筈も無く、皆が恐怖に顔を歪める。それでも得物を構えたのは防衛本能だった。
剣身に集めた月の光を跳ね返しながら、もう一度地面を蹴って更にスピードを上げる。
自分が風になったような感覚を全身に受けて、剣を握る手に力を籠めて振り下ろした。上段から振り下ろされた刀身は、騎士の右肩口に吸い寄せられる。
それを辛うじて腕を上げた騎士の剣が弾く。しかし、それでもジェノアの剣は止まらない。握りこまれた剣の重みと剣圧は、対する騎士のそれを遥かに超えていたのだ。
鮮血を撒き散らしながら倒れ伏す騎士の肩を踏み台に、ジェノアは大きく跳躍する。騎士達も、その姿を追うように天を仰いだ。
「おおおおおおお!」
憤激するジェノアの剣が天井付近で煌き、重力に身体を預けて落下する。地面に着地した重低音と同時に騎士の一人を両断した。騎士達が息を呑む。大量の返り血を浴びたジェノアの瞳が真っ赤に染まり、悪鬼のような微笑を湛えていたのだ。
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