とある猫の話し

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「にゃ」  私は猫だ。  それ以上でも以下でもない。 「にゃ」  水溜まりに目を落とす。  ぼやけていたが、どうやら人間の姿形をしているようだ、深く考える事は止めた。  実際人間になってしまったという事実、ただそれだけを受け入れる。 「にゃ」  諸々を試した。  喋る。 「にゃ」としか言えない。  私は口を閉ざす事にした。  歩く。  前傾姿勢の四足歩行より、二足歩行の方が楽だった。  楽な方を選ぶ。 「に……」  口を閉ざす。  私は猫じゃない、人間だ。 「にゃ」とは言わない。  そして、人間なら、 「――にゃ!」  決意を新たに、最後の「にゃ」  向かおう。
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