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「有り金全部おいてけば命だけは助けてやるぜ。ゲヒヒヒ・・・」
街へ向かう近道になってる街道で私は囲まれていた。
昼間でも暗いこの道は盗賊達にとっては恰好の仕事場なんだろう。
(またか・・・三流雑魚のセリフってのはどうしてこうも似たり寄ったりなのかしら。)
私は心底ウンザリしながら無視してやろうかと思った。
周りの気配からすると10人はいるらしい。
(・・・振り切る方が面倒くさいか。)
私は仕方無く立ち止まり盗賊達には聞こえないように静かに詠唱を始めた。
[永遠の森をさまよう深淵の女王よ]
「んん?神様にお祈りでもしてるのか?金さえ置いていけば殺しゃあしねぇよ。ゲヒヒヒ・・・」
言いながら値踏みするようにやらしい目つきで全身を見ている。
どうやら'命'以外は取る気満々である。
[我と汝の契約に依り力の刃を示したまえ]
私は盗賊達に微笑みかける。
「ウヒィ・・・ゲヒヒヒ」
盗賊達はアホ面下げて近づいてくる。
私が覚悟を決めたとでも思ったらしい。
そして私は最後の呪を紡ぎ出す。
ナイトメアエッジ
[黒刃衝撃陣]
刹那私を中心に黒い風が吹く。
その風は盗賊達に纏わり付くと同時に切り刻む。
「ぐぎゃー!」
「うぉーー!」
「ひぃぃぃ!」
口々に叫び声を上げて倒れていく盗賊達。
私は心底見飽きた光景の中でいつもと違う物を見付けた。
「ひぃぃぃ・・・助けて・・・助けて下さいぃぃ」
どうやら手を抜きすぎたらしい。
前にいた男が盾になり、風に触れなかったのだろう。
「あのねぇ・・・私はあんたの命になんて興味ないのよ。あんた達がちょっかいかけただけでしょう。」
私は"元盗賊達"を背にして再び街を目指して歩きだす。
「!!」
生き残った盗賊が何かに気付いて怯えた目で小さく呟く。
「あの首筋のタトゥー・・・クレイジーマリア・・・」
全く失礼な通り名である。
ちょっとイラッとしたけど私は街へと急ぐ事にした。
もうすぐ日が暮れる・・・いやそれよりも・・・
「早く準備に入らないと・・・紅魔龍の首を頂くのは私なんだから・・・ふふふ」
私は街道の奥へと進んで行った。
恐らく私以外にも腕に覚えのある者達が同じ場所を目指して続々集まっているはずだ。
一ヶ月ほど前に古の時代に君臨していた7魔王のうちの一人(?)紅魔龍復活の知らせが情報屋から届いたのだ。
恐らくこの世界に数多存在するギルドにも情報は届いているだろう。
「急がねば・・・」
私は足を早めた。
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