STAGE0:暗闇の中で舞踏会

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のトカゲに見えてしまう程の巨体である。 覚悟を決めて何人かの剣士が飛び掛かっているがまるで効いちゃいない。 まるで羽虫を払うようにちょろっと動かした尻尾に弾かれて骸の山が築かれていく。 ファイアボール [火炎球] 馬鹿な魔術師が炎の魔法を放つ。 炎を司る龍族に炎の魔法など効くわけがない。 ましてや相手は紅魔龍。仮にも魔王を火炎球ごときで仕留めれるなら誰も苦労しない。 周りはあてになりそうにない。 本当は弱った魔王をおいしい所取りしようと思ったのだが無理そうだ。 デ-モンキラー [黒滅白刃] 私の目の前に白く輝く剣が現れ、真っ直ぐに紅魔龍へ飛んでゆく。低級な純魔族くらいなら一撃で滅ぼす退魔の剣である。 『グォォォォォン!』 「・・・うわぉ」 まさかの鳴き声のみで掻き消されてしまった。 これほどの力を持っているのは計算外だった。 私はあの呪文を使う覚悟を決め詠唱時間を稼ぐ為に防御結界を幾重にも張り巡らせる。 [宇宙より無限の彼方の王よ] 私の体を呪文の列が包み込む。この魔法・・・もしや・・・ [我が身に流れる血の盟約に従い汝の力を示せ] 体を包む呪文列が昏い光を放ち体内の魔力が無くなって行く感覚。 やばい・・・魔力が足りないか・・・ [遥か古より汝の友たる我の牙となり我等に仇なす物全てを汝の糧とせよ] しかし予想に反して魔法は安定している。 違う・・・魔力はさほど減っちゃいない・・・私の魔力容量が有り得ない程の大きさに膨れ上がっている。今までの最大魔力がほぼ無い物と勘違いする程に。 これは・・・永久付与魔法・・・一種の凶悪な呪いだ。 存在してはならない魔法。存在し得ない魔法。人の身でありながら魔王を凌駕する力を血に宿す魔法。 そして呪文は完結する。 カイルブラッドインストール [無尽呪血方陣吸収!!] その魔物の力の総てが私に共有される。あまりに桁違いの魔力によって私の外見すら多少なりとも別者となっているのがわかる。 私は力に飲み込まれないように空に立ってボーッと辺りを見下ろす。 怯える様に私を見る紅魔龍。 魔王が怯んだと勘違いして攻撃を仕掛ける満身創痍の手練れの冒険者達。 私に宿った力に気付いて引き上げていく魔女達。 私の首筋の聖女のタトゥーだけが変わらずに微笑んでいた。
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