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「流石に玉突き事故でトラックに挟まれただけはあるわね。ペッチャンコじゃない」
人が頑張って走れば追いつけそうな速度のまま近付いてくるワンボックスカーの残骸。
その形が異形に変わった。
潰れたボンネットが跳ね開き、中から赤黒く長い舌がデロンと垂れ、開いた縁から鋭い牙が並んでるのもハッキリ視認出来る。
あたしの後ろでファインダーを覗いていたカメラマンがその姿に恐怖を感じヒッと声を出した。
これ位でビビったって事は心霊関係の写真を撮るのはほぼ初めてのカメラマンかな?
あたしにはどうでも良いけど、恐怖で写真撮れませんでしたって事だけは避けて欲しい。また、あたしが駆り出される事になるし。
「事故車に事故死した運転手のフードファイターの怨霊が取り憑いてるって資料に書いてたけどあんな露骨に口が出来ちゃうんだ」
つい思った事をそのまんま口に出しちゃった。霊具の発動中は思考がだだ漏れしちゃうのはいただけない。どうにかならないからな、これ。
そんな愚痴を口に出さないよう気を付けていると異形と化したワンボックスカーは急にスピードを上げてこっちに向かってきた。
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