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あたしを喰い殺そうとするその不気味な口を右に跳ねて避け、擦れ違いざまに真一文字に《那由他》を振り抜いた。
キンッと甲高い金属音とギャリギャリと筋張った肉を刃物で切り裂く耳障りな二重奏を奏でながら異形と化したワンボックスカーは上下真っ二つになった。
霊気の煙を上げてただの事故車の残骸に戻っていくその姿を横目で確認し調伏完了と呟いた。
仕事も終わったし、帰ろうっと。
すると、背後から悲鳴が聞こえた。
まさか、あたしがあんな雑魚相手にしくじった!?
慌てて振り返った先にはカメラマンがさっきの残骸の横にへたり込んでいた。あれだけの速度の物は動力を失っても慣性の法則で動き続けるからあっちまで行ってしまったみたい。
そこでふと気付いた。カメラマンの足元にあるあのキラキラした破片は何?
その周辺にあるプラスチックと金属の混じった破片は何?
嫌な予感がしていると今日の撮影の監督が近付いてきた。
「ごめんね遙ちゃん。カメラマンはどうにか無事だったんだけどカメラがスクラップになっちゃった」
嫌な予感的中。これで今日のあたしの仕事が半分意味を無くした。
「ホントに最悪」
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