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「で?親父、結局これどういう事?
冷静っぽいし、判ってるんだろ?」
と、スプーンの先を向けた玲の説明プリーズの言葉に、きょとんとした敬が口の中の物を飲み込んでからあっけらかんと言い放った。
「俺が知ってると思うか?」
「「はあ?」」
顔を歪めて同時に聞き返した私と玲に向けて、敬は嬉々として語り出す。
「いやさ、朝起きたら携帯圏外だし、便所は流れねぇし、窓みりゃ外があれだろ?
漂流教室みてぇで面白れぇなぁって、何処まで家が在るのか確認しにちょこっと外には出たけど、原因も何も知らね」
長々語った最後を、「あ、便所使ったら風呂の水で流せよ」何て締め括った。
最初は茫然としていたけれど、フツフツと怒りが湧いて来たのか、玲が勢い良く座卓に叩い腰を浮かせる。
「ふざけっ・・・」
『僕、少しなら説明出来るよ?』
玲が怒鳴ろうとした瞬間、言葉を遮る様に庭先から少年の声がして・・・
えっと、何と言いますか・・・
「「バーローだと?!」」
玲に続いて、今度は私が座卓を叩きながら、勢い良く庭に顔を向けた。
姉弟揃って、ちょっとばかしオタクです。サーセン。
「え、あーっと・・・あ!乱太r・・・」
「親父!正解だけど、それはえぬぇーちけー的な意味でマズい!」
口を滑らせそうになった父を、間一髪黙らせた玲にサムズアップを向けた私は、全開の窓の向こう側に誰も居ない事に首を捻った。
「・・・ってか、今の声どっからした?」
三人揃って辺りを見回した所で、視界に入るのは見慣れた狭い庭とその向こうに広がる樹海ぐらいだ。
一つ、可能性が在るとするなら・・・
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