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「いや、無いだろ。ナイナイ」
「てか、そうだったらどんな厨二設定だって話しだしな」
視界の中に居るナマモノは、
ジッとこっちを見つめ返して、千切れんばかりに尻尾を振り回す大型の狸・・・
じゃなくて、大型犬サイズで、そこはかと無く狸っぽい雑種のナツぐらいだ。
『僕だよ?』
わふっと口を動かして、小首を傾げたナツの行動に、私と玲は同時に頭を抱えた。
・・・どっちかと言えば、耳を塞いだ。に、近いけど。
「っ!絶望した!安直な設定に絶望した!」
「てか何でバーロー・・・海苔介が良かったなー。喋る犬的な意味では」
飛ぶ家で何度泣いた事か!
って言うか、中の人の声が好きなだけです。サーセン!
あ、柔らか銀行のお父さんでもいい。
「ちょ!姉ちゃん突っ込みどころそっちかよ!?」
「や、だって現に喋ってる訳だし、周り樹海だし?」
そうなったもんはそう何だから仕方無い。
深く考えるのも面倒だし、どうせ答え出ないし。
え?やる気が無い?
誉め言葉ですが何か?
「それにさ、」
あれ。と私が顎で示した先では、敬がモリモリ朝食を食べながら、ぼんやりナツに視線を向けて居る。
「もっと早くにナツが喋れんの判ってたら、テレビ局とか連れてったんだけどなぁ」
『えっと、お父さん達と同じ言葉が喋れるようになったのは、こっちに来てからだから・・・その、ごめんなさい』
「だったら仕方ねぇな、悪い悪い!
喋っても喋らなくてもナツはナツだし我が家のアイドルだから気にするな!」
鼻を鳴らしてしょげるナツの頭をわしわし撫でながら豪快に笑う、親父の異常なまでの適応力の高さを示してから玲に向き直る。
「敬の武勇伝を見聞きしたり巻き込まれたりに比べたら、ナツが喋る事ぐらい可愛いもんだと思わないかねカーター君」
「あー・・・ですよねー・・・」
敬の武勇伝については長くなるので割愛するけれど、機会があったらまたその時に。
兎に角、生まれてこの方破天荒と言うか暴君と言うか・・・
まあ、そんな敬に振り回されなれている玲は諦めたような溜め息を吐いた。
そんな玲の肩を一つ叩いてから、食卓に戻った私はナツに話しを振る。
「で、ナツ。さっき言ってた説明って何?」
「ああ、そう言やそんな事言ってたな」
ナツに向かって唐揚げを一つ投げた敬も、「何だ?」とナツに視線を向けた。
・・・塩分強いから唐揚げを犬にあげちゃいけません。.
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