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玲に詰め寄られたナツが、えー?と視線を泳がせてから、パクリと小さく口を動かす。
「は?」
玲が聞き返したと言う事は何か言ったみたいだけど、私と敬には聴こえないような小さな声量だった。
「ナツ、ワンモア!何か良く聴こえなかった」
玲がもう一回!と立てた指を見て、犬の癖に溜め息を吐いたナツはモゴモゴと口を動かす。
しかしこの犬、喋るようになってから人間臭くなったもんだ。
・・・まだ一時間も観察してないけど。
『ごめんなさい・・・ナビゲーターって言っても、僕、そう言う便利機能は無いの』
しょぼくれるナツに、残念。と玲はその場で座り直した。
「了解、把握した。んじゃさ、もっかい聞くけど何が出来んの?」
『この世界の一般常識とかが判ります。後、お喋りぐらい』
ナツが口を閉じた後、静かな時間が訪れた。
正直、右も左も判らないこの世界で、此処の一般常識を知っているナツはかなり役立つ案内人(ナビゲーター)だ。
でも、ぶっちゃけ。
・・・それって、案内書(ガイドブック)で良くない?
外の樹海で、ンボギョギョルと鳥が鳴いた。
「・・・って!今の鳥か?!」
沈黙に耐えられなかったのか、私のモノローグからわざわざツッコミどころを拾った玲がクワッと空を見上げた。
うむ、態とらしいけどエアクラッシュ乙!
流石は我が家のツッコミ担当だ。
まあ、鳥かどうかは判んないんだけどねー。
と、思いきや、あっさり答えがナツから返って来た。
『一応、鳥だよ?魔物だけど。“メギョル”って名前で、この世界じゃ結構ポピュラーな、山に住む草食の鳥。あ、食用だって』
「ああ、なるほど。一般常識にはそう言うのも含まれる訳ね」『うん、そうみた・・・い?』
うん、と頷きかけたナツが、そのまま首を傾げる。
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