炎の請負人

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1日の授業を終えた放課後、桜沢光は友達の誘いを断り、教室を飛び出した。 5月だというのに、少し暑い。 腰まで伸びた黒髪、緑のリボン、緑のチェックのスカート、クリーム色のブレザーという出で立ちだが、少し暑い。 ブレザーを着てくるんじゃなかったと後悔する。 光はクラス委員羽田の紹介である人物に会うため、ある場所を訪れていた。神楽学園部活棟の一角にその場所はある。プレハブの建物、それが彼女の目指す場所である。 『トラブル請負所』 光はプレートを確認して、ノックした。 「開いてますよ」 そう声が返ってきた。少し間を空け、光は建物の中に入った。 ドアを開けると、正面に座る男と目が合った。 緑のタイにクリーム色のブレザー。その出で立ちから同学年なのだとわかる。燃える炎のような赤い髪が印象的であるが、それ以外は普通の一般生徒と変わりはない。 「どうぞ、用事があるんでしょ?」 男は欠伸をしながら言う。 「焔叢零(ホムラレイ)さんですか?」 「もしかしなくてもそうですよ」 光が訊ねると、男が答える。この人が、焔叢零。 光は、羽田から、怪奇現象の類の話なら、トラブル請負所の焔叢零を訪ねてみることを勧められた。 話によると、彼は不思議な力があるらしい。そのため彼なら相談に乗ってくれるかも知れない。 半信半疑で来たみたが、まったくその力はわからない。 「それで、何の用ですか?」 焔叢は先を促した。 「羽田ちゃんの紹介できたんですけど……」 「ふーん……彼女か…まあ、誰の紹介でもいいですけど。 誰なのか、どういったトラブルなのか、簡潔に説明してください」 焔叢は表情一つ変えずに話す。
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