炎の請負人

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その翌日、放課後に光は焔叢の下を訪れた。だが、そこに焔叢の姿はなかった。少し待ってみたが、焔叢が来ることはなく、光は帰ることにした。 一方焔叢は学園の図書館を訪れていた。 人気のない貸出禁止コーナーのところに来た焔叢は、棚横のモニターを操作した。モニター操作で棚が動く仕組みのようで、棚は静かな音を立て、動いた。 そこには地下へ繋がる階段があった。先の見えない、奈落に繋がる道を思わせる、真っ暗闇のような入り口が、ポッカリと口を開けていた。 そこへ焔叢は何の躊躇いもなく、足を踏み入れた。階段を下り終えた先には扉。それすらも躊躇いなく、開け中に入った。そこはワンルーム程の小さな部屋だった。いくつものモニターに囲まれた部屋。そして、正面には大きなモニターとパソコン。その前に一人の女性。 「そろそろ来ると思ってたですよ、焔叢たん」 女性は振り返ることなく尋ねた。 「そうですか…ならなんで来たか、わかりますよね?松さん」 焔叢はそう言って、松という女性の近くに座布団を敷き、腰を下ろした。 「ええ、解毒薬ですよ。今夜魔女の領域に入ったら、光たんに打つですよ。あとはいつものとおりですよ」 松と呼ばれる女性は注射器が入ったケースを渡した。それを受け取った焔叢は中身を確認すると、ブレザーの内ポケットに入れた。 「お礼はいらないですよ。ただ死なないでくれるだけでいいですよ」 「そうですか、ありがとうございました」 焔叢はそう言うと、立ち上がり部屋から出ていった。
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