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その日の夜
焔叢は依頼にあった旧校舎の前に来ていた。黒のズボンに黒のジャケットに身を包み、旧校舎を眺めている。
下校時刻はとうに過ぎている。そんな時間にも関わらず、焔叢はその場にいた。
しばらくその場にいると、足音が聞こえてきた。
足音がする方へと顔を向けると、何人もの人が旧校舎へと歩いてくる。その中に見知った顔がある。桜沢光である。
「魔女の標的にされた人達ですか……」
焔叢はそう呟き、光に近づいていく。
光の表情は虚ろで、意識があるのかもわからない。夢遊病のような状態だ。
焔叢はそんな人々とともに旧校舎の中へと入っていった。
それと同時に旧校舎内の景色が変わった。それはこの世のものとは思えない歪な空間。
焔叢はそんな事には気にも止めず、内ポケットから、松に貰った解毒剤を光に打った。
解毒剤を打たれた光は、その場に崩れるように倒れた。焔叢はそれを支える。
「う…ん……ここ…は…?」
少し待っていると、光は目を覚ました。
「気がつきましたか」
「焔叢君………」
「ここは旧校舎ですが、今は魔女の領域の中です」
焔叢は光に状況を説明する。
「今から魔女を退治します。離れずついてきてください」
「はい……」
光は困惑しながらも頷き、焔叢についていく。
しばらく歩いていると、とても広く歪な空間にたどり着いた。
そして、その空間の中心には、蝶と芋虫が融合したようなグロテスクな姿をした物体があった。
「あれは?」
「あれが魔女です」
焔叢はそれを見ながら、表情一つ変えずそう言った。
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