21人が本棚に入れています
本棚に追加
回想終了。
今の私の口元が緩んでいることは鏡を見なくても分かる。想像上の彼の笑顔を直視する度にニヤニヤが止まらない。そんな私は既に末期なのであろう。おっと涎。
手の甲で涎を拭き取っている間、彼は足を進める。こうして彼の背中を目で追いかけていれば、家の方角も分かるうえに彼を視界に収めて目の保養にもなるしでホント一石二鳥ですよね!
そして、彼が一軒家の前で立ち止まった。
私は電柱から顔を出してそれを見守る。あれが鈴木くんの家なのかな?わお、豪邸。庭が広いなー。よく見れば車が三台も停まっているよ。結婚すればお金持ちだねえへへ!
鈴木くんとの幸福な未来を妄想していたら、おかえりなさい、という声が聞こえた。女の声。気付けば、鈴木家の玄関から出てきたのはスタイルが抜群で発育がよろしい、それでいてどこか艶めかしいモデル体型の大人っぽいお姉さんだった。誰アノ人?
ただいま、と鈴木くんは言おうとしたのだろう。口が半開きのままの彼をお姉さんは、両の手で顔を包むようにして、そのまま鈴木くんの顔をその豊満な胸で埋めた。
「なっ、」
嫌がる鈴木くん。喜ぶお姉さん。照れる鈴木くん。笑い声をあげるお姉さん。
世界が一瞬、何もかも凍ったように見えた。わけが分からない。ただ一つ分かることは私のレッドなハートがダークにチェンジしたことだけ。
メモ帳、確認。
明日、鈴木くんとシフト一緒だうふふのふ。
問い詰めよう。詰問だ。返答次第ではあれですね。顔を殴るだけで許してあげましょう、
五十発。
最初のコメントを投稿しよう!