現れた欠片

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ぽかぽかとした春の穏やかな陽気を全身に感じて、(もちろん人様の)屋根の上で寝そべっていた少年はごろり、と寝返りをうった。 今日は村中が沸いている。 数ヶ月ぶりによその人間がこの村を訪れたのだ。 なんでも世界中を旅しながらその先々で手に入れた名産物を売り歩く旅商人だと聞いている。 しかしなんとも運が悪い御仁だとこっそり思っていたりした。 よりにもよって今日という日を選んでくることもないだろう。 正直少年の心の内は嬉しさと悲しさのフィフティーフィフティーで、なんとも言えないモヤモヤ感が胸を締め付けた。 太陽は既に天頂にたどり着き下降を始めていた。 「そろそろ帰るか」 気乗りのしない、きっとお人好しな顔をした旅人を爽やかに父が、にこやかに母が、迎えているであろう自宅へ帰る為、少年は軽やかに屋根から飛び降りた。 「あらリュウ、お帰りなさい」 「・・・いるの?」 「ええ、勿論よ。やっぱり最期くらいは美味しいものを食べさせてあげようと思って母さん張り切って料理してるのっ!」 ふぅんと気のない返事をすれば母は「もぅ」と頬を膨らませながら「お姉ちゃんにも手伝ってもらうから呼んできて」とちゃっかり頼んで来るのだから流石と言うべきか。 「了解」 旅人の姿はわざと視界に入れずに階段を駆け上がった。 幸せそうな顔を見たらきっと迷いが生まれるだろうから。 登りきってすぐのところにある姉の部屋をノックすると反応はない。 だが部屋にいることはわかっているのだ。 (まったく・・・メンタル弱いもんな) がチャリと強引ではあるがドアを引き開けた。 明かりはついてない。 けれどもベッドの上には丸くもこもことした布団の塊があった。 「ねぇちゃん」 びくりと塊が動いた。 _
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