序章

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やがて暗闇の中で辿り着いた最深部、続く道は無くも淡い光を放つ人より大きな繭の塊、ドクンと心音のように脈打つ繭に手を伸ばして触れる。 「イヴ…」 懺悔のように悲しみに満ちた声は暗闇に消えていき、繭の心音はやがて光と共に小さくなり、洞窟の暗闇が支配し静寂が訪れる。 やがて繭の中から現れたのは小さく黒い肌をした赤子、背には骨格のみの翼を生やし、瞼は開くものの眼球は無く、身体は心音と合わせ半透明に時折なり、内蔵は丸見えの状態になる異形。 その赤子の異形をまるで異物を出したかのように、途端に再び淡い光を放ちドクンと脈打ち始める繭。 そんな繭の様子を見て、安堵にも似た吐息を青年は零す。 「次こそは必ず…世界で貴女が彼と共に生きれるように…」 誓いのように繭に告げて、青年は赤子の異形を左腕に抱いた。
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