1章

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少女の正面の椅子に座り足を組んでいる青年は、どちらかと言うと女性に近い華奢な身体をしているが、見事に外見を裏切るような低音の声で少女に問い掛ける。 「んで、聞いてましたかぁ~?紫苑さ~ん…」 「すみません、聞いてませんでした…」 瞬時に脳天に走る激痛、数秒遅れで青年の握り拳を見た少女は殴られたのだと気付く。 「真面目に勉強する気ねぇだろ、授業中も寝てたんじゃないだろうな」 「寝てないよ、半分上の空だっただけで…」 再び少女の脳天に振り下ろされる拳、2度目の激痛に少女は机の上へと上半身を倒れさせた。 少女の名は春川紫苑、この蘭鬼高校に通う2年生。 そして青年の名は秋葉桔梗、紫苑の小学校からの幼なじみであり先輩でもある3年生だ。 「紫苑、今晩の夏祭り行くの禁止、お前は大人しく家で明後日のテスト勉強な」 「夏祭り一緒に行く約束したのに酷い…」 これ以上は学校での勉強を教えるのは無駄だろうと諦め、さっさと帰り支度をする桔梗の制服の上着の端を掴む。
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