4人が本棚に入れています
本棚に追加
少女の正面の椅子に座り足を組んでいる青年は、どちらかと言うと女性に近い華奢な身体をしているが、見事に外見を裏切るような低音の声で少女に問い掛ける。
「んで、聞いてましたかぁ~?紫苑さ~ん…」
「すみません、聞いてませんでした…」
瞬時に脳天に走る激痛、数秒遅れで青年の握り拳を見た少女は殴られたのだと気付く。
「真面目に勉強する気ねぇだろ、授業中も寝てたんじゃないだろうな」
「寝てないよ、半分上の空だっただけで…」
再び少女の脳天に振り下ろされる拳、2度目の激痛に少女は机の上へと上半身を倒れさせた。
少女の名は春川紫苑、この蘭鬼高校に通う2年生。
そして青年の名は秋葉桔梗、紫苑の小学校からの幼なじみであり先輩でもある3年生だ。
「紫苑、今晩の夏祭り行くの禁止、お前は大人しく家で明後日のテスト勉強な」
「夏祭り一緒に行く約束したのに酷い…」
これ以上は学校での勉強を教えるのは無駄だろうと諦め、さっさと帰り支度をする桔梗の制服の上着の端を掴む。
最初のコメントを投稿しよう!