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…いつもの街も、夜になると違う顔を見せるんだ。
DIRLINGは深夜の街に、まるで当たり前の様に佇んでる。
幾度か通った道なのに、自然すぎて今まで気付かなかった。
何となく気後れしながら…ドアを開ける。
店内はシックにまとめられたインテリアで…
いつかテレビで観た金ぴかの調度品なんて一つもない。
「いらっしゃいませ。ご指名などございますか?」
騒がしい店内なのに、不思議にはっきりと聞こえる響く声。
耳に優しい、落ち着いた声の男性が私に声をかけた。
おどおどとした私の態度に…包み込むような笑顔。
「あ…ナイト君…」
お願いします、が言えないまま俯いた。
こんな綺麗な人と話した事ない。
目が見られない。
「ナイトですね。有り難うございます。こちらへどうぞ。」
促されてついていった…けど。
綺麗な男の人を見て、自分と比べて…気後れする。
緊張しすぎてかくかくと動く私は、ロボットみたい。
やっぱり、場違い…帰ろうかな…
「何を飲まれますか?」
奇妙な動きのままでソファに座り、口を酸欠の金魚みたいにぱくぱくさせた。
そんなに綺麗に微笑まれたら…
帰りたいなんて言えなくて、立ち上がりかけた体を、妙に背筋を伸ばしたままソファに沈めた。
…なんでこんなに綺麗な男の人ばかりいるんだろう。
薄暗くて他の男の子の顔は見えないけれど、ナイトやこの人みたいに綺麗な人ばかりなんだろうか。
DIRLINGの中はまるで外とは別世界。
あまりに違いすぎて夢か現実か、わからなくなりそう…
「ナイトは只今参りますので、お待ち下さいね。」
この優しい声の男性がオーナー兼代表の蓮さんで、『猫かぶり』に気づいたのも後の事、だった…
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