86人が本棚に入れています
本棚に追加
猫じゃない!!
猫は無表情のままだし、大きな笑い声に変わったあの声は別の場所から聞こえてきた。
一体どこで誰が…?
「ここだよここ」
奥の桜の木からひょっこりと手のひらが出てきた。
ゆっくりと手が振られている。
声の主は、私の位置からちょうど木に隠れていたから見えなかったんだ。
揺れている手のひらに不安と恥ずかしさを抱きながらも、誘われるように近づいていく。
揺れる手のひらがピタリと動きを止めた。
けれど私の足は立ち止まらず、一歩一歩前へ進む。
迷いはなかった。
あの手のひらのもとへ、すぐにでも行きたかった。
最初のコメントを投稿しよう!