2011年

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~感想~ 54)「地のはてから」上・下 乃南アサ(講談社)☆☆☆ 大正時代の蝦夷地開拓、夜逃げ同然で開拓に一縷の望みをかけて海を渡った家族の物語。 頼りにならない夫に振り回されながらも幼き子ども2人を抱え必死に生き抜く母の執念の姿。 物心つく頃から電気や水道の無い山での暮らしで、やがて口減らしの為の奉公へ、そして不況の為実家へ戻り結婚、出産と、常に働き続ける逞しい娘の壮絶人生。 ようやく生活がマシになった途端戦争が始まり、物資不足や徴兵やら苦難の数々は容赦が無い。 そこにフィクションめいた救いも無く、ただ生きるということの厳しさが襲い掛かる。 山崎豊子「大地の子」を読んだ時の息苦しさに近い。 あれは満州だったけど、どちらも歴史上確かに起こったことで そのことから目を背けてはならない、と思う。 日本人が経験した最も貧しい時期を、忘れちゃいけないと。 にしても不平等な時代すぎて痛ましい。
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