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60)「続巷説百物語」京極夏彦
☆☆☆☆☆(角川文庫)
このシリーズの見所は何といってもクライマックスの又市一味による鮮やかな「仕掛け」だが、毎回どこからが仕掛けなのか全くアプローチが読めず翻弄される。
だからシリーズなのにいつも初めて彼等を知るような気持ちで全く飽きない。
そしてもう1つの軸になっているのが、百介と彼等との「距離感」。
これは見事に前作が「起」「承」、本作品が「転」「結」を成している。
細かく言えば「船幽霊」のラストで「転」を迎えていて、ここでの変化はぐっとくるものがある。
だからこそ最後「老人火」はただもう切ない。
涙で文字が滲んで読めなくなってしまう。
控えめな表現が想像力を掻き立てて余計たまらない。
結果は分かっているのに。
身分差の無い現世においても、出会う人全て共に歩めるものでもない。
出会ったことが間違いだとは思いたくないが、住んでる世界の違いという動かせない事実の前には、ただ心の中で思うことしか許されない。
又市一味と百介のこの揺れ動く距離感は、
どんな人間でも割り切って考えられない部分があるという人間味に満ちている。
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