2011年

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61)「後巷説百物語」京極夏彦(角川文庫)☆☆☆ 明治維新後10年、洋行かぶれやら侍精神やら個性的な4人が「巷説」について討議をし、隠居住まいの翁の許へ相談に行く。 この翁こそ年老いた山岡百介。 やがて百介によって体験した昔話が語られる。 出だしの「赤えいの魚」からパンチ力のある体験談で、今は生きてるのに殺されるような恐怖。怖かった。 体験談には又市一味の仕掛け話が隠れ見え、百介の懐かしく思う気持ちが伺える。 後半に進むにつれ、百介の今の心境が綴られてまた切なくなる。 一枚の紙切れが及ぼす衝撃はあまりにも大きい。 やがてラストの百物語開催。 百介の仕掛けであり時代を担う若者達の仕掛けでもあり世代交代を感じた。 そして百介は百一個目の燈芯となり…静寂へ。 唯一生きていたと思える日々は幻ではなかったと。 時代が急に変わった分、巷説とはどういうものかと問う作品になっている。 エピローグ、だけども決して蛇足でもなく 振り返る楽しさ、といったところか。 どうしても現役には適わないから☆は3つで。 同日刊行した前巷説~を読む宿題が増えた。
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