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１)｢おまえさん｣上
宮部みゆき(講談社文庫)
長編の上下巻で、ようやく上巻を読み終えた。
上下巻読んでからの感想だと春になってしまいそうなので、とりあえず上巻のみの感想まで。
｢ぼんくら｣｢日暮し｣に続く第３弾。
冒頭からいきなり気張ったお徳の行進。
意表を突かれながらも引き込む力は強く、懐かしく、温かい。
消えない人型のシミという、のっけからホラーめいた剣呑な事件の捜査に乗り出した矢先、被害者が増え事態は混沌の渦に。
複雑に絡まった人間の気持ちはやすやすと紐解けるものでもない。
それにしても。
登場人物の向こうに、その人の人生が見える。
スピンオフ作品を出すとしたら主役候補が多すぎる。
そのひとりひとりに感銘をもらうから、すごい作品だとひたすら感動する。
おでこのひたむきさに胸を打たれながらも癒され、
弓之介の聡さには見惚れながらも案じてしまい、
お徳の人柄には、師匠と呼びたい衝動にかられ、
平四郎の鷹揚さも時には必要なゆるさと知り、
平四郎の奥様の気遣いの細やかさには妻のあるべき姿を映す。
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