2012年

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1)「おまえさん」下 宮部みゆき(講談社文庫) 余りにも面白く、連日連夜読み込んで読み上げて疲労困憊だけれど充足感。 本作品は、全てが伏線でそれらの線がラストに収束するミステリーではなく、 あえて余分な部分を増やして回り道の景色を楽しませてくれる。 下巻でいきなり弓之介の兄という今後も楽しみな濃い人物も登場し、このシリーズがまだ続く期待を抱きながら本を綴じた。 主人公の平四郎だけでなく、視点が政五郎や丸助にシフトするのも、中弛みしやすい長編にはカンフル剤となった。 事件の後味は僅かに口の中がざらつくが、皆幸せなんてなれない道理は途中で納得させられるし、 「男はどこまでも莫迦で。 女はどこまでも嫉妬やきだ。」 つくづくその通りだと思った。 面倒だけれども「人が面白い」 平四郎の根底にあるそんな気持ちを通して読むと ただ、談笑できることの幸せを実感する。 タイトルの「おまえさん」は上巻ではピンとこなかったものの、下巻ではたくさんの「おまえさん」に触れた。 お紺の政五郎への「おまえさん」 亡くなったお万の丸助への「おまえさん」 まだその呼び名は早いのでは無いかと訝しい気持ちになる娘の「おまえさん」… 同じ言葉でも含む色や熱がこうも違うんだなって。 最後に、 それほど出番は無かったのに存在感なら主役級のお徳。 どんどん同居人が増えて面白い。 いつかお徳長屋の差配人になってほしいと思うのは、私だけでは無いはず。 文句無しの☆☆☆☆☆
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