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が、しかし。
鰻のハイレベルな拷問を目にしてきた人物達はこの言葉を誤解せざるをえない。
またまた方程式で表すと。
鰻+サディスト+使わない用具+地下室=恐怖
である。
「へ、へぇ~……」
因みに鰻本人はこういった誤解をされている事を熟知している。
知った上での発言とは性質の悪い行動なのだが、鰻なので仕方が無い。
先を行く鰻の後を追いかけながら、サディアスはなるべくさっきの出来事を忘れようと努力していた。
「あぁ、そういえばサディアスは此処に来るのは初めてでしたね」
足を止めず、更に後ろも見ずに、サディアスにそう問い掛ける。
雅に今日が鰻の誕生日である事を知らされ、是非にと頼んで連れてきて貰ったのである。
経緯を俄かに思い出しながら、「そうッスねぇ」と返す。
サディアスの返答に答えず、ただただ鰻は目的地にへと足を進める。
デルフィンドの唯一の商店街が見えた所で、何やら豪華な車が止まっている事に気付いた。
それはサジュラグルアでは『アンバー』と呼ばれるメーカーの車で、セレブしか乗れないと言われる程の高級車である。
どちらかと言えば田舎町のデルフィンドで、ああいった物に乗れるセレブが訪れるのは稀有な事。
時折通る車に一々初々しい反応を示していたサディアスだったが、あの高級車には一味違うリアクションを取っていた。
「うおぉっ、凄い車ニャス~。黒統一とか厨二病ッスね」
別に厨二病の定義に黒は必須とまではいかない物の、確かにそういった雰囲気は感じられる。
小さな唸り声をあげながら、鰻は苦虫を噛み潰したような表情で車に夢中なサディアスの狐耳を摘む。
「さぁサディアス、此処で一つ問題です。人狼で黒歴史の塊って誰の事でしょうか」
「ああ、イージークエスチョンですね。帝すんッス」
「正解です」
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