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これについては最早語るまい。
何故ならば、それは直ぐに解る事だからだ。
ズンズンと鰻に抱きついているサディアスの元へと近づき、首根っこをむんずと掴んで引き剥がす。
抵抗するサディアスの脳天にチョップを入れ、制裁を加える。
鰻より遥かに細い腕をしている雅だが、やろうと思えば鉄板すら容易に貫通する事が出来る程の力の持ち主だ。
その力の秘密とやらは、やはり彼女が”妖怪である”としか言いようが無いだろう。
本人曰く、「愛の力ね」らしい。
説明をしていなかったが、鰻は”元”人間だ。
現時点では四分の一だけ人間だ。
ハーフとも言い難いが、正にその通りなのである。
しかし、最近ではその残りの四分の一の”人間”も”妖怪”にへと変わりつつある。
鰻が妖怪にへと変化をもたらした原因は彼の左目にある。
異形ともとれる、真っ黒の眼球。
幻想郷にいる閻魔はコレの事を”反魂黒眼”と呼ぶ。
大罪を犯した者に、無理矢理生きて償わせると言う拷問用具の一部だ。
この眼がある限り、”所有”しているだけで例え眼を潰されようと跡形もなく消し飛ばされようとも”蘇生”する。
この蘇生のコンセプトはつまり時空、絶対的権力を持つモノである。
宿主が死ぬと即座に眼が効果を発動し、宿主が絶好調であった”時刻(とき)”の状態を細胞の一片に至るまで総て復元する。
しかしながら都合のいい事に、記憶に関してはそのまま引き継がれる。
眼自体には妖怪が持ち得る魔力、”妖力”を備えている。
妖力を宿している物に四六時中触れていても使用者にはそういった変化は訪れないが、肉体の一部となっているのなら話は別物である。
つまり、鰻はこの眼を宿してから既に人間ではなく、妖怪として生きる事になったと言う事だ。
徐々に妖力が身体を蝕み、現在に至る訳だが、本人はこの事を悲観するのではなく、喜んでいた。
愛する妻との間に境界線などあっていい物か。
勿論、答えはノーだ。
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