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愛は種族の境界を越える――
そう、偉人は言った。
しかし、現実はまったく違う。
元より長生きする妖怪と早死にする人間。
これの何処に愛があるのだと言うのだろうと鰻は考えていた。
一生添い遂げる気で結婚したと言うのに、人間である自分が先に死んでは全くの意味がない。
――遥かに自分より強い雅を弱い自分が守る。
と、格好よくプロポーズの時に言ったのだが、雅はポカンとした顔でこう返した。
『おかしいな……折角のプロポーズの言葉なのに全然心に響かない……』
それもそのはず、弱者が強者を守るなど傍から見れば同情を買うだけの哀れな茶番劇にしか見えないからだ。
雅の強気な性格が素直に出した返事は、プロポーズした鰻の心の隅々にまで響いていた。
では、現在はどうなのだろうか?
という疑問は愚問であり、愚考である。
雅が鰻との結婚を許したと言う事は、そういう事である。
「む~、雅さんはそうやって直ぐに独占したがる……独占禁止法違反ですぜよ~」
さっきまでサディアスがしていた事を今は雅がしている。
その光景を文字通り親指を銜えて見ているサディアスは、ジト目で訴えかける。
「何よ、生意気言っちゃってさぁ。華燐を除く他の奴が鰻と抱きついてるだなんて妬かざるをえないじゃない」
「むぅ……返す言葉がないニャス……」
深い溜息をつき、観念したように両手を挙げ、横に首を振る。
羨ましそうに二人を見つめ、自分の狐耳をもふもふ。
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