学園惑星アカデミア

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「ヒカル、どこか寄ってくでしょ?」 「うん…」 友達の声にそう答えながら、絹川ヒカルは空を見上げた。 アニス宙域にある学園惑星アカデミア。 アカデミアは幼等部から大学院まであり、惑星としては最小ながら多くの住民が暮らしている。 住民は学園の関係者ばかりだけど、星間モノレールで繋がっている隣の惑星には商業施設が充実している。 休日には住民のほとんどが、隣の惑星に遊びにいってしまう。 それくらいアカデミアには勉学以外の施設はない。 逆にいえば、勉学に関する施設は不自由なく、十二分にあり、どんな疑問もすぐに解決することができる。 銀河一の学園惑星なのだ。 絹川ヒカルは学園惑星アカデミアの高等部の2年生。 身長158cm、短い黒髪ボーイッシュな服装が良く似合う。 学園の寮には1人部屋と2人部屋が選べるが、ヒカルは1人部屋で暮らしている。 皆といるのはホントに楽しい。 けれど、ヒカルには皆に言えないコトがある。 ヒカルには過去の記憶がない。 この学園に来る5年前より以前のことが。 何も覚えていない。思い出せない。 両親のことも、兄弟姉妹がいたのかどうかどうかも、わからない。 知りたいけど、知りたくない。 思い出すのがコワイ。 もしも何かの拍子で思い出した時、周りに人がいたらどんな顔をすれば良いのかわからない。 だから1人部屋にした。 初めてココに来て、中等部に入った時、身の回りの物と一緒に渡されたギャラクシーカード(GC)。 全銀河共通のお金であり財布でもある。現金は存在せず、決済はすべてGCで行われる。 そのGCには1000万も入っていた。 普通の人の月給が15万ならば、1000万なんて夢のような額。 記憶を失う前、何をしてそんな大金を手に入れたのか。 知るのがコワイ。 思い出すのがコワイ。 それでも生活していかなければならないので、学費と生活費でGCの残高はかなり減っている。 「ねぇ、ヒカル?」 空をぼんやり眺めていて友達の呼ぶ声に気づくのが少し遅れた。 「どうかしたんですかぁ?」 触角のように立った髪でヒカルの頬をツンツンしながら、もう1人の子も心配そうに覗き込む。 「ううん、何でもない」 慌てて首を振るヒカル。 「今日はどこに寄ってくか、聞いてるんだけど?」 週休2日で明日と明後日は休みだ。 週末は隣の惑星で遊ぶのが、このアカデミアに住む者の唯一の楽しみだ。
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