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グラウンドを横切り、校門を出ると一面緑が生い茂っている。
アカデミアは教育には自然も大切だと主張している。
そのため、学園と居住区以外は緑が生い茂り、小動物が生息していたりする。
緑あふれる道の先には駅があり、居住区行きとモノレール乗り場行きの電車がある。
ヒカルたち以外の生徒はすでに移動したのか、辺りには誰一人、他の生徒を見かける事はなかった。
ぐおおおおん。
聞き慣れない轟音がヒカルたちの耳に届く。
突然だった。
ばきばきばき…
ずぅーんっ。
周囲の木々を薙ぎ倒しながら、それは落ちてきた。
「きゃあぁぁぁ!」
叫びながら頭を押さえるレイナ。
落ちてきたのは巨大なムカデのような生物。
宇宙害獣─ヴァーミン─
広大な銀河を住み処とし、惑星を喰らう野蛮な生物。
出現場所は不特定で殲滅するのは難しく、これまでにいくつかの惑星・宙域を失ってきた。
「きゃあぁぁぁ! 虫っ! むしぃぃぃっ!」
レイナはさっきよりも大きく叫ぶと、震えている。
レイナは大の虫嫌いだった。
と、そこへ。
轟音を響かせながら、一機の戦闘機が降りてくる。
「大丈夫かい? お嬢さんたち」
外部スピーカーから男の声が聞こえてきた。
「え? あ。はぃ、大丈夫ですぅ」
レイナを抱きながらアイルは答えた。
「じゃあ、しばらくじっとしていてくれ」
男はコクピットをあけ、身を乗り出し短筒を構えた。
短筒は小型化されたミニプラズマ砲だと思われる。
「これでもくらいな」
男が狙いを定めたその寸前、ヒカルはそれに手を置いていた。
「待った」
「危ないぞ、お嬢ちゃん」
いつの間にかヒカルはコクピットの縁に腰掛けている。
だが、次の言葉を聞いて、そんなことはどうでも良くなった。
「あれは意外と動きが早い。これ一発で何とかなるとは思えない」
「そうはいっても、な」
男は他に武器はない、という素振りだ。
「戦闘機のミサイルは使えるだろう?」
「あぁ。だが致命傷は負わせられない」
「煙幕くらいにはなる。こっちはわたしがやる」
ヒカルは男からミニプラズマ砲を奪い取った。
「あ、おい!」
男が声をかける隙もなく、ヒカルはコクピットの縁から飛び降りると、茂みの中を駆けていった。
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