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「…ったく、しょうがねぇなぁ…」
男は呟き、安全のため戦闘機の周囲を見渡すと、アイルとレイナは互いに抱き合いながら、巻き込まれないように木陰に身を隠している。
「やるしかねぇか」
男は戦闘機を操縦し、ヴァーミンに向けるとミサイルの引き金を引く。
一斉に発射されたミサイルは、ヴァーミンを頭上から襲う。
周囲に広がる白煙。
「ちっ…」
男は失敗だったかと舌打ちした。
だが次の瞬間。
雷火のような閃光が下から上へと突き抜けた。
ぐひゃあぁぁ…
断末魔のような音。
白煙の晴れたそこに、喉元から頭を撃ち抜かれ横たわるヴァーミンと、その体液を浴びたヒカルの姿。
「やるな、お嬢ちゃん。どこかで訓練でも受けたのかい?」
男はヒカルに、きれいとはいえないタオルを投げ渡す。
ヒカルは頭と顔を拭きながら考えた。
「……………わからない。ただ、そう思っただけ」
ヒカルは男に、べったりと体液のついたミニプラズマ砲を返し、腕と足の体液を拭きとった。
"トトロス、応答しろ!"
戦闘機に通信が入る。
"大丈夫か?"
「あぁ、民間人に助けられちまったがな」
"民間人?"
通信相手は眉を寄せ、訝しく思っているようだ。
"トトロス、その場にいる民間人、乗せられるだけ乗せたら帰還しろ! この惑星はしばらく閉鎖になる"
「了解した」
トトロスと呼ばれていた男は通信を終えるとヒカルたちを見た。
「…ということだ。来てもらえるかな?」
外部スピーカーは入ったままだったから、やりとりは聞こえていた。
嫌だ、と言い出すかと思われたレイナだが、案外大人しく頷いた。
銀河一の財閥の娘が、閉ざされる惑星に居残るなど許されないことだと、レイナ自身よくわかっていた。
トトロスの乗って来たこの戦闘機、どうやら改造してあるようで、パイロットの後ろには横向きの長椅子がある。
ちょうど三人分ぐらいで床が広い。
万が一の救助に使えるようにされているのか、それとも救護船の一部と改造されたせいなのか。
応急処置ならできそうなくらい、色々な器具が揃っている。
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