追放

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 日々の狂騒の最中、私は日に日に冷静になり、周りの連中を観察した。  ずっと前から近くで馬鹿騒ぎをしているのに名前すら知らない。  話の内容も何百回同じことを聞いたものか。  しかし、改めて考えて見ると不思議なことばかりだ。  もっと記憶の糸を手繰り寄せ、何があったか思い出さないと――  ――ここは楽園。  ――気兼ねする事なく自由に飲んで、歌いたまえ。  そういえばそんな言葉がどこからか響いたような。  そうだ、その言葉は心地よく体中に染み渡り、それから忘我の中へ入って、喧騒の日常へ溶け込んでいった。  そして今、たぶん私だけが自分という存在に気付き、思い出している。
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