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その3 再会
中学校にはろくな本がない!
品揃えが悪くてイライラする。
と先生に言ったが最後、図書委員長にされてしまった。…まだ一年生なのに。
私と同じく施設の子、つまり孤児や片親の子が多いこの学校は学力レベルが低くガラも悪い生徒が多い。
学校は生徒の自主性に任せているという建前で放置気味だ。
委員会も顧問より委員長の方が権限を多く有し、その代わりに義務も多い。
そんな面倒極まりないモノに任命されてしまった…が先輩方は全くやる気がない。
なのでしかたなく…そう、仕方なく引き受けたのだ。
学校の予算で本を買えるなんて最高、とか思ったわけではない。決して。
と、そんなわけで学校の図書室を私物化したのだが意外と私が仕入れる本は好評だった。
有名どころもしっかり抑え、マイナーな児童文庫も入れた。
ジャンルもファンタジーから伝記もの、神話、ミステリーetc...と幅広い分野で集めたし、ライトノベルなども仕入れたから生徒が手を出しやすかったのだろう。
…閑話休題。
そんな図書室で借りた図書を読みながら帰路につく。
危ないとはわかっていてもやめられない。
続きが気になるし…それに"上原佳央里"の頃からの癖なのだ。
"佳央里"の頃はよくどこかにぶつかる前に彰浩が止めてくれていた…そういえば彰浩はどうしているんだろう。そもそもここはどこなんだろう。
幼馴染をきっかけにさまざまな思考が交錯する。
最初は転生だと思った。
だが生まれてからしばらくして西暦が自分が…"上原佳央里"が死んだときのそれよりも古いことに気が付いた。
そして今なお、西暦は"あの日"に追い付かない。
転生とは過去に生きた人の魂が未来で生を受けるのではないのだろうか。
そんなことをとりとめもなく考えながら歩いているとリュックが後ろに引かれた。
足が止まる。はっとして顔を上げると電柱があった。
「危ねーぞ」
そう笑い混じりに言うのは高校の制服を着た男だった。
ぶつかるところだったのを止めてくれたのだろう。なんだかデジャ・ヴを感じる。
止めてくれたのはわかったが人の失態を笑うのは失礼じゃないだろうか。
私は笑いを噛み殺しているその男を軽く睨んだ。
「何か?」
瞬間、男はぶふっと吹き出してひーひー笑い出した。
何なんだこの男…非常に誰かを思い出すぞ…いやまさか、そんなことがあるはずはない…
思い付いた可能性を脳内で即却下してやっと笑いの波をやり過ごした男を見る。
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