炭酸水

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『殺人を犯してみたい』 放課後の教室。私と我が君以外誰もいない教室。 窓辺で我が君がつぶやく。 いつもの独り言。外では野球部が練習してる声がする。 『神はなぜ、僕をこの世に産み落としたんだろう』 不意に飲んでたサイダーの缶を握り潰す我が君。 気の抜けたサイダーの、純水のような透明感と爽快感のイメージとはうらはらに。手にかかったサイダーは。糖分でベタベタになり。我が君は一層不快感になっただけのようだった。 我が君は不快そうに指をシャツで拭うと、私を一瞥して言った。 『ねえどうして僕は神じゃないんだろう?どうして神は僕じゃないんだろう』 私は読んでいた本から目を上げると、我が君をまじまじと見つめながら言った。 『純水でできたサイダーは。気が抜けてぬるくなってしまえば。爽やかなイメージとは裏腹に。ベタベタとぬるついて気持ち悪い。純水は純粋。純粋な人だって。いつの間にかあどけないイメージがついてるけど。それってあどけないというより、自分に正直過ぎて人に迷惑かけるわがまま自己中な奴ってことじゃない。そゆこと』 それだけ言ってまた読みかけの本の世界に戻ろうとすると、我が君が待ったをかける。 『それはつまり、僕がそうっていいたいのかな?』 勢い良く本を閉じると、溜め息をつきながら眼鏡を外して黒髪をかきあげ、私は不快感丸出しの態度で、無言の返事を返した。 『聞こえないな』 いたずらな子供のように、ふっとわらう我が君は、気の抜けたぬるいソーダよりも。この世で一番不快な存在だ。 『もうかえろうか』 私は呆れて言った。 いつもの諦念で。 彼はまた子供のようににやりとわらい、勝機の笑みを浮かべた
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