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小さい店内にあった、いくつかの写真は、全部母の撮った写真でした。
日置様に褒めて貰ったと喜んでた天使の羽の写真は、母が最後まで自慢していた唯一の白黒写真でした。
デジタルカメラが普及するなか、様々なお客様の中で、母にとっては忘れられないNikon Fを肩から提げて入ってきた日置様に、母がくぎ付けになったのは云うまでもありません。
日置様の写真の最後の一枚、母を撮って下さったのだと聞きました。
『こうしてふらりと旅をして、どうしても最後の一枚は人を撮りたかったんですよ、お願いできますか?あ、あのカメラ達をバックに』
母は少しはにかみながら、体調の良い時にそう話してくれました。
『NikonFで撮って貰ったのはこれで二度目…』
弱音を吐かぬ母が珍しく呟くように言った言葉が今も忘れられません。
『日置と云う苗字、昔の知り合いの人と一緒で驚いたのよ…』
私が生まれるずっと前、母が愛した人も、写真を撮る人だったとずいぶん前に聞いたことがあります。
もしかすると、その人もNikonFを愛機にしてた人だったかもしれないと、そして、日置様のお父様ではなかったかと、今さらながら思います。
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