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肩は既に作っていた為、洋一を座らせる。
右腕を三回転くらいしてからプレートに足をかけ、洋一の方に向き合う。
「よし!来い!」
洋一がミットを叩き構えたのを確認すると俺は投球モーションに入った。
「………」
芹沢は集中してこっちを見ている。
俺は渾身のストレートを投げ込んだ。
―――――ぽす
「………へ?」
芹沢が思わず声を上げる。
それもそのはず俺の放った球は綺麗な放物線を描きゆっくりとミットに収まったのだ。
あれだけ集中して見ていたのだから予想外のスピードに気が抜けたのだろう。
「…そうか。まだ肩慣らしだったのか。そうかそうか。」
そんな事を言う芹沢がどこか現実逃避しているように思えてくる。
「次は全力で頼むよ。」
全力だったのに…そう思うと腹が立ってくるのだが最近は自分自身慣れてきたようだ。
なので冷静に言ってやった。
「全力で投げてるから!喧嘩売ってんのか!」
訂正。全然冷静じゃなかった。
「ははは。まぁまぁ落ち着けよ。」
洋一が間に入る。
まだ芹沢は現実が受け入れられず混乱していた。
「あんな豪快なフォームからあのスピードってまるでチェンジアップ…はっ!そうか!チェンジアップだったのか!」
もうスルーしていいよね…
勝手に混乱している芹沢を置いといてこっちで軽い投げ込みをした。
投げ込みが終わり、少し休憩していると監督が現れた。
「よーし。全員揃ったかぁ?」
一年生は8人しかいないので監督がざっと見て、人数を確認するとすぐに指示に入った。
「んじゃまず最初はノックから始めるから。」
その指示を受け、早足でノックの受ける場所へ向かった。
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