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「よろしくお願いしやーす。」
全員で脱帽し深く礼をする。
それを合図にノックが始まった。
カキン―――パシ――カキン――パシ
坦々とノックが進んで行く。
やはり1番上手いのは芹沢だなと思いつつ俺もボールに集中していた。
終わってみると捕球回数15回の内、4回エラーとなんとも言えない結果だった。
ちなみに洋一はエラー3回。
芹沢は唯一ノーエラーだった。
他にも出来る奴がいた。
エラーはたったの一回、そしてなんと言っても送球がかなりよかった。
確か名前は…………思い出した。片岡 信(カタオカ シン)って名前だ。後で話かけてみよう。
「よーし、んじゃ次はバッティングだ。俺はヒットか凡退かじゃなくてバットスイングの速さとどれだけ強い打球が打ててるかを見るからな。」
監督が指示を出す。
内野程のスペースしかないのにヒットかどうかなんて分かるわけないからそれくらい言われなくとも理解でき―――――
「マジかよ…」
「どうしてそんなめんどくさい事を…」
案外分かってないものだな。
みんな口々に呟いていた。
「んじゃ呼ばれた奴から打て。一打席勝負だ。初めは芹沢。」
「はい。」
返事をしてバッターボックスに入る芹沢。
―――カキ-ン
監督が投じた一球を見事にセンター返し。そして―――
「ぐふぅ!」
監督に直撃した。
「だ、大丈夫ですか。」
慌てて監督に寄る芹沢。
「き、気にするな…ナイスバッティングだ…」
そんな状態でも選手を気遣う監督がかっこよく見えた。
「でも治療費は払えよ…」
気のせいだったみたいだ。全然かっこよくない。今ので台なしだ。
結局、治療費なんか必要ないのでそこは気に留めなかったが監督が投げれないので一年生からピッチャーをという事になった。
ピッチャー希望だったのは二人。俺と加藤 宏樹(カトウヒロキ)という奴だ。
とりあえず俺が三人、加藤が四人担当する事になった。
まずは俺から。
バッターは送球のよかった片岡だ。
「………」
怖い顔をしてこちらを睨んでくる。
だが気にも留めずにストレートを投げ込んだ。
「なっ…」
片岡は思わず空振り。
二球目はなんとかカット。
やるな…かなり早い段階で当ててきたか…
三球目――――カン
真上に上がりキャッチャーフライ。
なんとか俺の勝ちだ。
次のバッターは……加藤だった。
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