一章 扉の向こう

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「おっす、海崎! お前今日は授業一時間もサボらなかったな!」 それとたいした間を空けることなく、やけに調子のいい口調の声が掛かる。 「……人をサボり魔みたいに言うなよ、雪井」 「実際結構サボること多いだろ?」 雪井雄一。 派手に逆立てた短めの髪型が特徴的で、良く言えば明るく、悪く言えばバカっぽくいつも笑っているクラスメイトだ。 人に悪意や害意をまったく感じさせないような雰囲気を持っている、と言えば聞こえはいいが、ぶっちゃけると、バカだ。 だが、それすらも彼にとっては長所のように思えるから不思議だ。 高校に入学してから最もつるんでいる仲間でもある。 「そこまででもねぇって。お前は相変わらず寝てばっかりだったみたいだけどな」 「俺にとって、『授業』と書いて『睡眠』と読む!」 雪井は、ぐっ、と胸の辺りに握りこぶしを作ってそう力説する。 なんで顔がどこか誇らしげなんだよ。
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