一章 扉の向こう

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「国語勉強し直せ。もしくは病院に行け」 「病人扱いすんじゃねえ! つーか、そのくらい正しく読めるわ!」 「わーってるって」 冗談で言っただけなので適当に流しておく。 というか、こいつは自分がバカだということを自覚しているのは確かだが、それを誇りに思っているんじゃないかとさえ考えてしまう。 「それに俺だって集中して受けている授業だってあるぞ!」 「なんだよ?」 「体育!!」 ……なるほどね。 「寝て受けてたら逆にすげぇな。他には無いのかよ?」 そう聞くと、雪井はう~ん、と唸りながら考え始めた。 「無い!! お前みたいにサボりまくるよりマシだろ?」 「まくるってほどじゃねえだろ。基本的に週に五回程度だ。毎日一時間だけだ。しかも国、数、英、社、理、単位がやばくならない程度にバランスよくサボってる」 「……なんか計画的で余計にたち悪い気がするぞ」 「テストで単位取ってりゃいいんだよ」 「出たよ、テスト前だけがんばって点数だけもってく奴。無駄に平均点高くすんなよ。追試くらいやすくなっちまうだろ」 こいつはそう言うが、別にテスト前だけ頑張ってるわけではない。 授業をサボるためと教師からうるさい事を言われないために、そこそこの点数を取れるくらいの勉強は普段からしている。
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