一章 扉の向こう

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雪井の方はと言うと……正直言うと壊滅的だ。 こいつにとっては、『脳が筋肉でできている』という言葉も誉め言葉らしい。 「いいじゃねえか。その分お前は平均点を大幅に下げた英雄として一部の人間から崇(あが)められるぞ」 「……『大幅に』ってのがむかつくな」 「下げてるのは否定しないんだな。てか、気にするとこ違くね?」 「いいんだよ。俺は立派な睡眠学習をしてるんだから」 「俺もサボってる間は基本寝てるぞ」 「授業を聞きながら寝るのと、何も聞かずに寝るのとでは少なからず差が出るはずだ!」 「寝てる時点で何も聞いてねえだろ!」 ……放課後は必ずこいつとこんなバカなやり取りをするのが日常だ。 お互いに知り合って以来、ずっとこんなことをし合っている。 その後もしばらく他愛のないおしゃべりを続けた。 「俺はゲーセン寄って帰るけど、海崎はどうする?」 適当に話して話題が尽きてきたころに、雪井がそう切り出した。
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