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フリトは頭の穴という穴から血を流していた。絶叫の間、思考や目に見える景色は真っ暗であった。
ただ頭蓋を割り、内蔵を蹂躙する激しい痛みに苛まれるばかり。自らの絶叫が笛の音を遮り、思考にかかっていた霧を散らした。
フリトは抜剣と共に目を覚ましたが、少しの間、ただ炎を見つめていた。
そこには闇に燻る焚き火を囲む二人しかいない。
笛の音はもう聞こえなかったが、スパントはまだ身悶えし、口からどす赤い血を吹き溢している。
父とも言える年端の家臣を、青年は揺すぶって助けた。
壮年の勇将はぐったりと押し倒れ、フリトは追って座り込んだ。
二人の濁った呼吸音を、夜更けの重たい静けさが押しつつむ。久しい間、それだけであった。
二人は鎧衣装に血深泥をこびつかせた。目や鼻、口を伝った血の尾も拭かず、二人は弱々しく立ち上がった。地平に昇っている陽を背景に、不気味に盛り上がる黒い森を見据えた。
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