フリトの冒険

13/84
前へ
/91ページ
次へ
森が騒ぎ立て、遥か遠くから敵意を表している様に思える。 「これでフォルスの詩人やウオルハルトに怖がられてきた理由が分かったよ」 フリトが言った。 二人は直ちに馬を駆った。まだ夜も明けず、傷は疼いたが、二人は強行した。 やがては丘に着き、そこに生えた一本の老木の下へ休んだ。 平野は広大だ。南にエルサント、北には古代の遺跡があるし、東西の大国をも隔てている。 ハルム森までの旅程でさえ、平野に比べれば短い物だ。湖に対する大海、丘陵に対する山である。 夜を待たず、睡眠の水面下へと沈んでいった。警戒も痛みもない場所へと、隠れる様に。深く深く、湖面を逃れて潜り行くフリトを引っ張りあげる者がいた。 目覚めた時、スパントが彼を揺さぶっていた。夜は更けているし、火も起こしていない。 なにか言う前に、強烈な腐臭が鼻腔を撫で、蝗の蹂躙する様に腹の中まで達していた。 重たい臭気を喉に詰まらせた様に物も言えず、家臣に伴なわれて馬の方まで走った。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加