第二章 闘い

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 くぼしんは詩織の放った漆黒の波動を、その蒼碧の大剣で受け止めた。  しかし、衝撃は皆無。  波動は収縮し、そして波紋の様に拡がった。  空間そのものを揺らす、漆黒の波紋。  くぼしんを包むように響いたそれは、僅かの間で消え失せる。 「……?」  そして、くぼしんの動きが、停止した。 「目が……! ちくしょうでやんす!」  飛び退くくぼしん。  詩織は剣を抱えたまま、やおら歩き出す。 「ブラックウィドウ」  詩織が、つむぐ。 「波紋に触れた者の視力を奪う」  剣を構え、くぼしんに投げつけた。 「永久に」  白銀の残像を描き、水平に飛行する詩織の大剣。  しかし、そこでくぼしんの表情が変わる。  何かに気付いたように僅かに顔を上げた。 「……時間でやんす」  飛来する大剣がくぼしんに突き刺さる直前。  くぼしんを含む全ての兵は、その場から消滅した。  剣は地に刺さり、静止。 「――遠隔転移!?」  驚愕する詩織。その許に、北爪が舞い降りる。 「なんや、皆消えてもたで」  北爪は辺りを見渡す。しかし、兵士の骸以外は見当たらない。 「逃げたんか?」  詩織に尋ねる。  考えこむ様に腕を組んだ詩織は北爪を見た。 「彼は“時間だ”と言っていた。最初から転移することが決まっていたような言い方」 「それが、どないした?」 「彼等の目的は……」  詩織の碧眼が見開かれる。 「まさか、戦略大魔法の座標確認? もしそうだとしたら、村が危険」
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