終末の足音

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無造作に地面に散らばる赤黒いそれは──人間の小腸だった。 頬にべったりと血液を付着させた隊員をはじめ、機動隊の全員があり得ない状況に思考停止に陥る。 その間も犠牲になった隊員を囲んだ人だかりは蠢き続けていた。 やがてピタリと動きを止め、群衆はこちらに向き直る。 昼前の陽射しに照らされた群衆は皆一様に、まだ食べることに慣れない幼児がそうするように、口周辺に血糊をべったりと付着させ虚ろな目でこちらを眺めていた。
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