幼き逃亡者

4/77
前へ
/376ページ
次へ
そして、次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。 いつも自分の寝ていたベッドとは違って、硬く、布団も暖かさが伝わらなかった。 そして、病院の独特の匂いが鼻を刺激した。 ソラは、体を起こすと頭部には白い包帯が巻かれていたのに気づいた。 そして、長い時間寝ていたせいか背中が少し痛かった。 周りを見渡すと、他にはベッドは置かれていない。 どうやら個室のようだった。 『目が、覚めたかい?』 不意に声を掛けられて、ソラはビックリして飛び上がった。 声を掛けてきたのは、初老の男性だった。 服装は、ポロシャツに黒いスラックスと大して特徴がなく、顔も印象には残りにくい、シワの多い顔だった。 ソラには、その男性と会った記憶はなかった。 ソラは、突然のことに驚いて上手く返事が出来なかった。 『頭は痛むかい…?』 『…うん。』 やっと返事を出来るようになったが、ソラは少し男性を警戒していた。 男性もそれに気づいたのか、ニコニコしながら自分から名乗りでた。 『私は、いろんな子供達のお世話をしている。桐生って呼んでくれ。』 桐生は、手を差し出して握手を求めてきた。 ソラも、それに気づいて、オドオドしながらも手を差し出して手を握った。
/376ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加